人間、50を越えたら牛肉を食べるのはやめたほうがいい【適菜収】
【新連載】厭世的生き方のすすめ! 第3回

■肉の脂と魚の油
では魚はどうか。魚と肉では、脂質の種類が違う。常温で固体になるのが「脂」で、液体になるのが「油」だ。肉の脂には血中コレステロールを増やす飽和脂肪酸が多く含まれ、魚の油には血中コレステロールを減らす不飽和脂肪酸が多く含まれている。脂質は魚で取ったほうがいい。
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以前、「肉と魚、どちらが好きですか?」と聞かれたことがある。「魚です」と答えてはみたが、雑というか大雑把な質問である。日本人が食べている肉の種類は多くないが、魚の種類は挙げていけばきりがない。比較すること自体が間違っている。
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私は酒を飲まなくなってから焼き魚定食を食べることが増えた。問題は焼き魚を出す店が少ないことだ。それでも何軒か見つけ出した。某駅の近くにある焼き魚屋は、朝7時からやっていて、安くておいしい。サバの塩焼きもサーモンハラス干しもいい。難点は狭いことである。

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四半世紀ぶりに某和食チェーン店にも行った。昔、セットのざる蕎麦の端のあたりが緑色だったのでひっくりかえしたら、びっしりカビがついていたので、その後、「嘔吐屋」と呼んで避けていた。しかし、今年になってから様子見で入ってみたら、なかなかおいしいので通うようになった。
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鯛のかぶと煮がすばらしい店も見つけた。そこは毎日やっているわけではないので、ネットで事前に確認しなければならない。
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サバ、サケ、ホッケ、ブリ、銀ダラ、カマス、沖目鯛、サワラ、アジ、カンパチ、アカウオ……。順番に回していけば、もう死ぬまで肉を食べなくていいと思うようになってきた。肉よ、さらば。
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この原稿を書いた翌日の夕方、デパ地下で2000円くらいする牛肉弁当が半額になっていたので買って食べた。おいしかった。一貫性がないと言われるかもしれないが、50を越えたらあまりストイックにならないほうがいい。
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白洲次郎は「プリンシプルがある男」と呼ばれたが、私はプリンシプルがない男になりたい。
文:適菜収
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